符牒は、
お菓子なれば「きしるし」という。おそばなれば「とくいし」という。御飯なれば「ふしんかた」という。肴《さかな》なれば「またろ」という。(肴《またあい》)かもしれません。
大門通り右側に、たはらや(田庄)呉服大問屋、大丸その他へおろし店。そのさきに市田、これも大問屋、市田の方は多く織ものと模様もの、上々品ばかり、人形町その他の呉服店へおろす。
大門通り左側は角からずっと金物店ばかり、この辺を通ると店々にならんでいる番頭若者らが、よき女子の時は煙草盆《タバコぼん》のはいふきを二ツ叩《たた》く。それをまた隣りの店で二ツたたき、つぎつぎに知らせるのです。大丸のまむこうに、大丸出入りの菓子や「かめや」あり、旅籠町《はたごちょう》通りに大丸とならんで大丸の糸店《いとだな》と扇店があり、「みすや針店」のとなりが森田清翁という、これも出入りの菓子や。十月十九日べったら市の日には店へ青竹にて手すりを拵《こし》らえ、客をはかって紅白の切山椒《きりさんしょ》を売りはじめます。たいした景気、極々よき風味なり。向側の「かめや」にても十九日にはやはり青竹にて手すりをこしらえ、柏餅《かしわもち》をその
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