花火と大川端
長谷川時雨

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【テキスト中に現れる記号について】

《》:ルビ
(例)國境《くにざかひ》

|:ルビの付く文字列の始まりを特定する記号
(例)花火|間《ま》も

[#]:入力者注 主に外字の説明や、傍点の位置の指定
   (数字は、JIS X 0213の面区点番号、または底本のページと行数)
(例)※[#「插」でつくりの縦棒が下に突き抜けている、第4水準2−13−28]
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 花火といふ遊びは、金を飛散させてしまふところに多分の快味があるのだから、經濟の豐なほど豪宕壯觀なわけだ。私といふ子供がはじめて記憶した兩國川開きの花火は、明治二十年位のことだから、廣告花火もあつたではあらうが、資本力の充實した今日から見れば、三業組合――花柳界の支出費だけで、大仕掛のものはすくなかつた。
 江戸時代の川開きとは、納凉船が集つてくる、五月廿八日から八月廿八日までをいつたものだといふが、納凉舟から打上げた花火の競ひが、一夕、日をさだめて盛んに催されるやうになつたものと思へる。客寄せに岸の割烹店が行なつたよりは、富む者たちが打上げさせた方が、金力が豐だつたことはいふまでもない。

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