一體どれくらゐなのなの。
――一間以上、もしかするともつと大きなのかも知れない。なめし[#「なめし」に傍点]賃が高くなければ、何かにこしらへて、分配《わけ》ても好いとはいつてゐたけれど。
と、いふと、分けるより一匹の方が好いと思つたのか、
――でも、いいや、皮なら。
と春子|畫孃《ぐわぢやう》わに皮一枚をものしようと思つてゐる。
――皮ぢやないよ、本ものの剥製だから、ちよいとグロテスクで、預けるのにもてあましてるのだから、春ちやんとこの二階の畫室へ吊しておけばつて、いつてあげたの。あなたなら氣味わるがらないだらうし、繪にも描くだらうからと思つて。
あははは、あははは、と彼女の甲高い笑ひはとまらない。笑ひ笑ひいふには、
――早速新聞から寫眞をとりに來て、春子さん、鰐を兩脇に抱へてください。もつとわににあなたの顏をおつつけて、つてなことになるなア。
あははは、あははは、とそこにゐるものたちは、みんな笑つてしまつた。
まさに、春子|畫孃《ぐわぢやう》、その夜は、腕を現して、チヤンチヤンコを一着におよんだやうな輕い洋裝で、南洋風俗をおもはせないでもない。前日、南洋を根城とす
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