と思ったからだ。
 だが、モルガンは、真心《まごころ》でかかれと決心した。人種はかわっているとて、この、しおらしいところのある、古くさい人々。男性絶対尊重の女たちにまで、肘《ひじ》鉄砲をもらっては、それこそもはや、何処《いずく》の国へいっても顔向けの出来ない男性の汚辱を残す。切り出したからには、今度は、なんでもかんでも成功しないではおかない――
 モルガンが、そうした決心を固めている時、お雪の周囲でも、頭を突きあわせて相談がはじまっている。
 親族会議の方では、古《ふる》門前裏の小屋《こいえ》に、抱え主、親元、小野亭からも人が来て、つまるところは、金高で手をひくように吹っかけたらということになった。
「なんとしてもあんたさん、毛色の違うた男にはな。」
と、二の足を踏んでいる母親に、姉さんや叔母者人《おばじゃひと》たちは、
「そないに雪が、気にいらはったのなら、加藤の家に養子に来てもろたらいいと、皆いうてですがと、そういうたらどうや。」
 そら好い考えだと、それも一つの条件になった。
 お雪はまた、浅酌《せんしゃく》の席で、贔屓《ひいき》になる軟派記者に、鼻声になって訴えている。
「あん
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