りにまた、失恋した人、厭《きら》われた男ときくと、その人を見下げないと、自分の沽券《こけん》にさわるように見もしかねない。だから、あんな奴にと思うような男に多くの女がひっかかって、恋猟人《ラブハンタア》の附け目となり、釣瓶《つるべ》打ちにもされるのだ。
そこでモルガン氏に帰れば、彼は、米国から、失恋の痛手を求めに、東洋へ来たのだと、何処からとなく知られていた。フランスでも癒《いや》されない恋の痛手を、慰撫《いぶ》してくれる女を、東海姫氏国《とうかいきしこく》に探ねて来たのだと噂された。
しかし彼は、かなり金ビラをきって情界を遊び廻り、泳ぎまわった割合に、花柳《かりゅう》の巷《ちまた》でさえ、惚《ほ》れた女を、幾度も逃している。
モルガンは、お雪と逢ったはじめは、お雪の十九の年で、あっさりと別れているが、お雪の廿一の年に来て恋心を打明け、廿三のときに正妻に根引きした。それが三度目に日本へ来たときのことで、その後、結婚して帰国した次の年に一度、また次の年に来て、それきりモルガン氏も日本へは、バッタリ来なくなってしまったのだ。
お雪との交渉もまだはじまらない時分、京都へも足を踏み入れ
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