お灸
長谷川時雨

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《》:ルビ
(例)お灸《きう》

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(例)※[#「廴+囘」、第4水準2−12−11]
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 お灸《きう》ずきの祖母が日に二三度づつお灸をすゑる。もの心覺えてから灸點の役が、いつかあたしの仕事になつてゐた。五百丁の巴《ともゑ》もぐさをホグして、祖母の背中の方へ※[#「廴+囘」、第4水準2−12−11]《まは》ると、小さい燭臺《しよくだい》へ蝋燭をたて、その火をお線香にうつして、まづ第一のお灸を線香でつらぬき、口の中でブツブツ言つて、體中を手早く御祈祷するやうな手附きをした。いづれなんとか文句があつたのであらうが、おそはつた時から忘れてゐるのだ。祖母が沈香《ぢんかう》をもつてゐたのと、指《ゆび》をやけどしたりすると、チチンカンプンと口で吹きながらいつたのとを、ごつちやにして、なんでも、
 沈香御祈祷、チチンカンプン、チチンカンプンとごまかしたやうだつた。
 その祖母が、自分が灸ずきなのばかりでは
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