轉《ころ》がす――がまんしてゐると、ますます大きくして熱《あつ》がるかと樣子を見てゐる。
 あたしは熱がりながら十一二で、おとなしくして、羽箒《はばうき》をもつて、どんなにしたら具合よくゆくかと、細かく神經《しんけい》をつかつて祖母の背中にむかつてゐた自分の姿を思ひ出してゐた。そして自分の後《うしろ》に心《こゝろ》で笑つてゐる娘《むすめ》を見てゐた。その娘は非常に醜《みにく》くて青い鼻《はな》汁をグスグスいはせてゐるが、××樣があたしをくどくのなんのと書いた紙《かみ》を捨ておいて、いつもあたしを困らせてゐるのだつた。氣をつけて――と頼《たの》むよりは、他《ひと》の手をかりなければならないことで、しかも亡父があれほど氣にしてくれた肩《かた》なのだから、お灸の養生法はそれきりで中止してしまつた。
        ×
 大きな灸《やいと》を心にすゑて苦しむ――それは別の心ゆかせもあらうが、さういふ意味でなく、自分を叱るお灸も心にすゑなければならない。折々思ひだされるのは、もぐさ[#「もぐさ」に傍点]の匂ひと、むかしあたしの膝《ひざ》の前にすわつた祖母と、ついこの間、後から腰へ膝を押しつけたあ
前へ 次へ
全5ページ中4ページ目


小説の先頭へ
文字数選び直し
長谷川 時雨 の一覧に戻る
作家の選択に戻る
◆作家・作品検索◆
トップページ 登録 ご利用方法 ログイン
携帯用掲示板レンタル
携帯キャッシング