轉《ころ》がす――がまんしてゐると、ますます大きくして熱《あつ》がるかと樣子を見てゐる。
あたしは熱がりながら十一二で、おとなしくして、羽箒《はばうき》をもつて、どんなにしたら具合よくゆくかと、細かく神經《しんけい》をつかつて祖母の背中にむかつてゐた自分の姿を思ひ出してゐた。そして自分の後《うしろ》に心《こゝろ》で笑つてゐる娘《むすめ》を見てゐた。その娘は非常に醜《みにく》くて青い鼻《はな》汁をグスグスいはせてゐるが、××樣があたしをくどくのなんのと書いた紙《かみ》を捨ておいて、いつもあたしを困らせてゐるのだつた。氣をつけて――と頼《たの》むよりは、他《ひと》の手をかりなければならないことで、しかも亡父があれほど氣にしてくれた肩《かた》なのだから、お灸の養生法はそれきりで中止してしまつた。
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大きな灸《やいと》を心にすゑて苦しむ――それは別の心ゆかせもあらうが、さういふ意味でなく、自分を叱るお灸も心にすゑなければならない。折々思ひだされるのは、もぐさ[#「もぐさ」に傍点]の匂ひと、むかしあたしの膝《ひざ》の前にすわつた祖母と、ついこの間、後から腰へ膝を押しつけたあ
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