腰・etc・
遂にドッと窓へ寄る
突然出発の命令が出て、ニワトリの毛を半分むいて捨てる。その半分、裸のかしわが、クックッと逃げる情景
支那の老婆が日向ぼっこして、麦わら細工を縫み乍ら兵隊の行軍を見ている。
軍馬の水をやる、ニイ小輩
五色旗を持つ
空、戦火、黒煙が夕立雲の様
荒れ果てた土の上の烏三羽
[#ここで字下げ終わり]
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手紙
(井上金太郎 宛)
十六日の朝になってもまだいつ上陸するのか分りません。
天気晴朗ですが波はべら棒に高いです。荷物船の底に馬と一緒に居るのでクサクて閉口です。此処まで来た以上早く支那の土を踏ンでせめて小便ぐらいしてやりたいと思います。[#地付き](○○ニテ)
今上陸命令が来ました。(十六日夜)
(日本映画監督協会 宛)
遂に僕も「戦争」に参加しました。そして悪運強くマメで居ます。御安心下さい。
○○の敵中上陸から北支派遣が上海派遣と早変りです。此処は南京豆と南京米とそして南京虫の本場です。
(井上金太郎 宛)
揚子江岸に上陸して南京入城に至る迄の一ヶ月間はまことに、はや、タイヘンなもンでした
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