五題
山中貞雄

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 ひとが電報まで打ッて厭じゃと断るものを無理に書けと言って寄こした旬報の曰くが「左記項目のうち御気に召した題を御選びの上御執筆下さいますよう茲に懇願いたす次第」と書いて題のところに「小説の映画化戯曲の映画化私感。内外優秀脚色家。好きな脚色家。僕の一番苦しむもの。他雑感」とある。眺め渡した処「御気に召した題」が一つも見つからぬので面倒臭くなって片っ端から一瀉千里に片付けてやる決心をする。
 先ず最初の小説及び戯曲の映画化私感。小説(若しくは戯曲)の映画化に際して僕は(ひとは知ら無い。私感とあるから僕の考えを書く)その構成をシナリオの構成にする、と云う事を第一に心掛けねばならないと思う。大へんわかりきった事で恐縮ですが、僕なぞ時々此のわかりきった事を失念してとんだ恥を晒します。僕の盤嶽の一生のシナリオは原作に忠実過ぎた為に――原作の構成をその侭シナリオの構成とした為に失敗しました。そのくせ物語の中の数多くの挿話の一つ一つや、一つの挿話から他
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