、酒を飲む者の言葉には注意していると面白いものが多い。

「山中の道楽は酒を飲むことと、映画を見ることだ。」
 と言われているのを耳にする。
 映画人が映画を見るのが何の道楽だ。
 映画人が映画を見、映画を作るのは仕事だ。
 酒の場合は?
 これにはどう答えてよいか。
 兎に角僕は心おきない人と盃を交すのが好きだ。
 そして静かなところで、ボツリボツリと話し合っているうちに、酒に酔うことを忘れていつしか相手の、又時には自分の言葉の味に酔っている。
 愛酒家の言葉……これが映画の中へ持って行って生かして使えるとなれば、飲酒も亦僕の仕事の一部と言えるのではあるまいか。
 呵々!



底本:「山中貞雄作品集 全一巻」実業之日本社
   1998(平成10)年10月28日初版発行
入力:野村裕介
校正:伊藤時也
2000年2月18日公開
2003年10月17日修正
青空文庫作成ファイル:
このファイルは、インターネットの図書館、青空文庫(http://www.aozora.gr.jp/)で作られました。入力、校正、制作にあたったのは、ボランティアの皆さんです。
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