敬四郎が例の羽織をお兼に突きつけて、
T「誰に断ってこんなものを買ったのじゃ」
やいのやいのとせめられてお兼オロオロ泣き出した。泣かんでもよい。
T「誰に呉れてやったのじゃ誰にッ」
お兼泣いて返事もしない。
T「何とか申さんか」
お兼が、
T「喋ると罰が当ります」
「罰が当る?」
どうも敬四郎には合点がゆかぬ。
T「強情な奴出て行けッ!」
T「離縁じゃッ」
まーと今迄泣いていたお兼さん怒った。
シツレーなこの人はッ、
T「私のヘソクリで私が買ったのが何故悪いのです」
形勢が逆転して来た。右門と伝六の微苦笑。
お兼、
T「誰に差し上げようと私の勝手ですッ」
敬四郎タジタジです。
「そ、そう怒るな」
「いいえ怒ります」
とお兼。
T「出て行けと仰しゃれば出て行きます」
たッた今出て行きます。で立ち上って次の室へ行く。
敬四郎が心配して、
「コレコレ怒るな」
で後を追う。
22=隣室
お兼、敬四郎のとめるのもきかず箪笥から着物を出します。
右門と伝六そッと覗いて見ると、
敬四郎、お兼の前にペコペコ頭を下げて、
「ワシが言い過ぎた。謝る、謝る」
ダ
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