落ちて居る。

17=本堂
 伝六本堂へ忍び込む。和尚が本堂の中央に黙然と坐して居る。伝六「もしッ」と声を掛けたが和尚返事もしないで黙祷を続けている。伝六少し怒って「オイッ御用だ」と叫ぶ。
 和尚ジロリと伝六をにらんだ。
 伝六十手を示して、
T「少しお訊ねしたい事があるんですがね」
 和尚が、
T「寺社奉行様への手続を踏んで参られたか」
 伝六返答に困った。
 和尚ニコッともせずその儘読経を続ける。伝六取りつく島も無い。
 その手には編笠と羽織。
                  (F・O)
18=(F・I)右門宅
 編笠と羽織を調べる右門。羽織の袂の裏を返すと隅に白糸三筋縫い込んである。右門伝六にそれを示して、
T「この羽織は生島屋の仕立だ」
 と言って、
T「あそこで縫った品ァこの通り」
T「袂の裏に白糸を三筋縫い込んである」
 成る程と伝六感心した。
                  (F・O)
19=(F・I)生島屋の店先
 表で敬四郎と松公が様子を窺っている。
 店先では右門と伝六が例の羽織を見せて、主人太郎左衛門や手代の伊吉に訊ねている。
 主人の太郎左衛門が、
T「
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