それでね兄さんとても悲観していたわ」
 そうだろうと伝六。おふみが、
T「ひょッと兄さん変な気を起して」
T「川へはまるか首をつるか」
 成る程と伝六。
T「それが心配なの」
 とおふみが言ってる時、前を通り過ぎる娘二人、
T「厭なもんね土左衛門ッて」
 えッとおふみ胸騒ぎがします。伝六が、あのもしと呼び止めた。振り返った娘に、
T「見たんですか土左衛門を?」
 えーと娘が、
T「たった今其処の橋の下で」
 伝六が、その土左衛門、
T「男ですか?」
 えーと娘達――おふみ心配だ。伝六が慌て出した。
T「一ッ走り見て来るぜ」
 伝六走って――

9=鳥居の処で
 出会い頭に衝突してひッくり返った。
T「無礼者ッ」
 と叫んだのが結城左久馬の連中。侍の一人が伝六の首筋掴んだ。
 あばたの敬四郎と子分の松公が通りすがりに之を見る。

10=茶店
 仕出しが二人三人口々に「喧嘩だ」と叫んで走って行く。
 其処へ敬四郎が来て腰を下す。おふみ「何ですの?」敬四郎が、
T「喧嘩さ」
 と言って、
T「可哀そうに伝六の奴」
 「へッ」
 おふみ驚いた。遠くワイワイ騒いでる群集(五、六カット程で)カメラ
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