よウ似てるけど、と言った顔で立ち止りました。
T「兄さんじゃ無い?」
 へッと伊吉。
 「おふみか?」
T「何考えてんの?」
 と伊吉、
 「いや何でも無いさ」
 その傍を通り掛かったお侍、結城左久馬(相当大身である)。供の若侍二人を見返って「あの女」と言う。おふみの事である。美人じゃ喃と言った顔で見惚れた。
                  (F・O)

8=(F・I)とある境内の茶店
 朝である。
 床几の隅に腰掛けておふみが考え込んで居る。
T「何を考え込んで居るんだい」
 おしゃべり伝六が立ち止って訊ねました。おふみ、
T「まあいい処へ、休んでいらっしゃいな」
 伝六腰を下ろした。
 結城左久馬、若侍五六を伴ってやって来たが、茶店の伝六とおふみを見て立ちどまる。左久馬供侍に、
T「あの女、虫がついている喃」
 その侍がハッ仰せの通り。左久馬が、
T「苦しうない、あの虫踏みつぶせ」
 若侍心得て去る。伝六におふみ話す。
T「あたし、はっきり断ってやったの」
 もったいねえと伝六。
T「しかし生島屋は金持だぜ」
T「嫌ね此の人は」
T「あたし金持は大嫌い」
 と言って、
T「
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