近寄ってその人垣の中から悲鳴が聞える。
T「お助け――」
T「人殺し――」
 おふみ心配で走って来た。敬四郎ものこのこ戻って来た。
 おふみ敬四郎に、
T「助けて上げてッ」
 敬四郎ニヤッとして、
T「ワシの言う事きいて呉れるか?」
 えッとおふみ、
T「どんな事?」
T「どんな事てそりゃお前」
 と敬四郎。
 その時――
 人垣が崩れて侍が一人フラフラにされて逃げて来る。続いて二人三人四人。後から向う鉢巻の伝六が大威張りです。
 おふみ喜んだ。
T「伝六さんよー」
 おふみ、
T「大丈夫?」
 伝六が、
T「心配すんねえこの伝六のうしろには」
T「右門の旦那が控えてなさらァ」
 その右門、結城左久馬を曳きずって現れた。左久馬散々な目にあって逃げて行く。
 大喜びのおふみ、ふと思い出して伝六に、
T「土左衛門は」
 伝六がアッ、
T「其奴忘れてた」
 で慌てて走り去る。
 (敬四郎のギャグを考える事)

11=橋の上
 仕出し二三人欄干から下を見て居る。川端に土左衛門が置かれてある。検視の捕方と仕出し若干、死体を取り巻いて立って居る。其処へ伝六走って来た。

12=茶店
 おふみと右門
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