「放っといて下され」
T「此の女の兄と、ちゃんと約束がしてあります」
 間違いないなと右門。太郎左衛門が、
T「私は生れつき物覚えのよい方で」
T「一度聞いた約束は滅多に忘れません」
 右門が、
T「ところがこの俺も」
T「生れッつきやけに物覚えがいい方でなァ」
 「一度見た面ァ滅多に忘れねえッ」
 「おッ大将」
T「お前の額のその傷ァ何だい?」
 「えッ」となる太郎左衛門。
 逃げんとする腕を捻じ伏せて右門は、
 おふみに、
T「おふみさんこの面をよッく御覧なせえ」
 おふみ不審そうにその顔を見る。

69=昨夜の
 覆面の侍は太郎左衛門ではないか。
 アッ、
 と驚くおふみ。
 右門が、
T「最初から皆共謀だったんだ」
 と言う。
                  (F・O)

70=(F・I)番所
 漸く釈放されたお兼と敬四郎は迎えに来た松公と共に帰る。お兼はオカンムリジャジャ曲りだ。
T「あなたがボンヤリして居るからこんな恥を掻くのです」
 敬四郎済まん済まんと謝ってる。
 お兼がポンポン叱りとばす。
T「愚図々々してないで早くあの坊主を捕えていらっしゃい」
 「しかし何
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