が笑って、
T「思う壺さ」
 お類も笑う。
                  (F・O)

67=(F・I)街道
 急ぎ足に行く伊吉。往来の旅人の女連れと見れば、先へ廻ってその顔を見て歩く。眼はもう血走って居る。
                  (F・O)

68=(F・I)茶店
 生島屋太郎左衛門がおふみを口説いて居る。
T「お前の兄さんはお類を連れて逃げて了った」
T「約束通り今日からお前さんに私の処へ来て貰います」
 「そんな事」とおふみ拒む。
 しかし、太郎左衛門、
T「兄さんが承知したんだから」
 これこれ駕籠屋さんと、駕籠の用意までしてあるのだ。
 おふみ
 「嫌です」
 と頑張る。
 太郎左衛門が、
T「お前さんも昨夜あの寺へ行ったんだろう」
 ハッとするおふみ。
 太郎左衛門、
T「お上では昨夜逃げた者をきつい御詮議」
T「わしが奉行所へ訴人すれば」
T「伊吉もお前さんも後ろへ手が廻るぜ」
 その時、
T「ついでにお前さんもなァ」
 と云う声に振り返ると右門と伝六です。
 「何を仰しゃいます」
 伝六が傍から、
T「此の女をどうしようと言うんだ」
 太郎左衛門が、
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