お詣りして何をお願いするんだい?」
 おふみが「あのね」
T「どうぞ私の願いが叶いますようにッて」
 アレッレッ、
 と伝六驚いて、
 さてはおふみちゃん、
T「誰かに惚れたね」
 「知らないわ」
 伝六が、
 「ハテ誰かな」
T「誰に惚れたんだい」
 「知らないッ」
 おふみちゃん、ちょいと赧い顔して立ち上る。
 伝六が、
T「誰だい? 言って呉れよう」
 おふみ知らないったらと逃げ出して、
T「あてて御覧」
 伝六考えて、
 「アッ解った」
T「えッ」
 とおふみ。
T「解ったよ」
 おふみ、
T「誰? 言って御覧」
 伝六へへと笑って、言えるもんか。
 おふみ、
T「言って御覧よう」
 伝六が、
T「あてて見ろ」
 落し咄です。
 やがて、帰るぜと伝六立ち去ろうとする。
 「アッ待って」とおふみ、
T「さっきのお寺の話ね」
 ふんと伝六。
 おふみが、
T「あれひとに喋ると罰が当ることよ」
 「えー?」と伝六。
                  (F・O)

30=(F・I)右門宅
 右門の前で伝六が、
T「人に喋ると罰が当るそうで御座んすがね」
 とすっかり喋って了った。
 
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