る。
 右門伝六に命じて別の舟で追っ掛ける。
 逃げる舟を追う右門の舟追っ掛け若干あって、

14=別の橋の附近
 伝六やいのやいの。
T「待てと言ったら待たねえか」
 逃げる船頭が、
T「人に喋るとあの男の様になります」
T「罰が当ります、罰が」
 その舟が橋の下へ来た時、
 橋の上の欄干に凭れた深編笠の侍が居る。
 その侍の足許の大きな石。
 船頭の舟がその真下を通る。
 侍が石を蹴落す。追って来た舟の上の右門「アッ」と叫んだ。船頭が顔中血だらけになってブッ倒れた。
 橋の上を――逃げる深編笠の侍。
 右門、伝六に追えと命じ、己れは船頭の舟に飛び乗る。川端を逃げる深編笠の侍。
 伝六舟を岸へ着けて川端を追う――
 右門船頭を抱き起した。船頭が断末魔。
T「罰が当ッたんです、罰が」
 と言った。
 川岸――
 逃げる深編笠を追う伝六。
 敬四郎と松公、裸で着物を乾して居る。

15=川端の寺のある処
 深編笠の侍は其処の土塀を飛び越えて姿を消す。伝六チラと其の姿を見て、続いて寺院の中へ忍び込む。

16=墓場
 伝六探し廻る。編笠が其処に落ちて居る。二三間離れて例の侍の着て居た羽織が落ちて居る。

17=本堂
 伝六本堂へ忍び込む。和尚が本堂の中央に黙然と坐して居る。伝六「もしッ」と声を掛けたが和尚返事もしないで黙祷を続けている。伝六少し怒って「オイッ御用だ」と叫ぶ。
 和尚ジロリと伝六をにらんだ。
 伝六十手を示して、
T「少しお訊ねしたい事があるんですがね」
 和尚が、
T「寺社奉行様への手続を踏んで参られたか」
 伝六返答に困った。
 和尚ニコッともせずその儘読経を続ける。伝六取りつく島も無い。
 その手には編笠と羽織。
                  (F・O)
18=(F・I)右門宅
 編笠と羽織を調べる右門。羽織の袂の裏を返すと隅に白糸三筋縫い込んである。右門伝六にそれを示して、
T「この羽織は生島屋の仕立だ」
 と言って、
T「あそこで縫った品ァこの通り」
T「袂の裏に白糸を三筋縫い込んである」
 成る程と伝六感心した。
                  (F・O)
19=(F・I)生島屋の店先
 表で敬四郎と松公が様子を窺っている。
 店先では右門と伝六が例の羽織を見せて、主人太郎左衛門や手代の伊吉に訊ねている。
 主人の太郎左衛門が、
T「
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