「放っといて下され」
T「此の女の兄と、ちゃんと約束がしてあります」
間違いないなと右門。太郎左衛門が、
T「私は生れつき物覚えのよい方で」
T「一度聞いた約束は滅多に忘れません」
右門が、
T「ところがこの俺も」
T「生れッつきやけに物覚えがいい方でなァ」
「一度見た面ァ滅多に忘れねえッ」
「おッ大将」
T「お前の額のその傷ァ何だい?」
「えッ」となる太郎左衛門。
逃げんとする腕を捻じ伏せて右門は、
おふみに、
T「おふみさんこの面をよッく御覧なせえ」
おふみ不審そうにその顔を見る。
69=昨夜の
覆面の侍は太郎左衛門ではないか。
アッ、
と驚くおふみ。
右門が、
T「最初から皆共謀だったんだ」
と言う。
(F・O)
70=(F・I)番所
漸く釈放されたお兼と敬四郎は迎えに来た松公と共に帰る。お兼はオカンムリジャジャ曲りだ。
T「あなたがボンヤリして居るからこんな恥を掻くのです」
敬四郎済まん済まんと謝ってる。
お兼がポンポン叱りとばす。
T「愚図々々してないで早くあの坊主を捕えていらっしゃい」
「しかし何処に居るのか分らんじゃ無いか」
「馬鹿ねえこの人は」
とお兼。
T「甲州街道へ女を連れて逃げたんです」
敬四郎喜んだ。
T「右門はまだその事を知るまいね」
「何言ってんのさ、あの人はもうとッくに出発しましたよ」
それは大変と敬四郎と松公慌てて走り去る。
「本当に仕方が無いね」
とお兼が見送った。
(F・O)
71=(F・I)街道
右門と伝六とおふみ呑気そうに旅に出た。
道傍に小供が五六人集まって何か悪戯をして居る。何んでしょうと伝六覗きに行こうとするのを右門はそのまま先に行く。
「一寸待って下さいよ」
伝六覗き込んでワーと叫んで逃げ出した。
小供は蛇をオモチャにして居たんです。
(F・O)
72=(F・I)街道
敬四郎と松公が行く。
(F・O)
73=(F・I)結城左久馬邸内
左久馬が十人ばかりの若侍を呼んで、
T「昨夜の事、お上に知れては身共の首が危ない」
と言って、
T「右門を殺して呉れ。頼む」
(F・O
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