ぬ。祖母を愛するのは御無理御尤《ごむりごもっとも》一|天張《てんば》りである。正妻を愛するのは、妻の人格を重んじ、自己の家と子供との利害を合理的に考え合せて愛するので、妻に過《あやまち》があればこれを責めて改悛させるその愛情は一時的の感情に止まらぬのである。世人はよく国際の関係には道徳なく、正義人道が行われないというものもあるが、我輩の見る所では、決してこれらのものが皆無であるということはない。今日はいまだ何事もこれらの標準によりて決せらるるとは言い難いのであるが、しかし早晩国の地位を判断するには正義人道を以てする時が来るのである。近頃は何《いず》れの国でもその心事を隠すことが出来ない、国民の考えていること、政府の為《な》したことは、殆《ほとん》ど総て少時間の後に暴露し、列国環視の目的物となる。そこで世界の各国が一国を判断する時には、その言うこと為すことの是非曲直を以て判断する、あるいはその代表者が如何なる言を発したか、如何なる行動を執《と》ったかによりて判断する、またある国が卑劣であり、姑息《こそく》であり、陰険であり、または馬鹿げたことをすれば、それは直《ただち》に世界に知れ渡るの
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