。彼はその国を愛するためにその国の短所を指摘して、彼らの執《と》るべき道を教えかつ彼らを導いてくれたのである。ただ惜むらくは予言者は自国に名誉を得ない、とかく彼らはいわゆる愛国者のために排斥せられ迫害され、その予言の的中するまでは無視され勝《がち》なものである。けれどもこういう人があって始めて国家は偉くなるものと思う。自分の一身を顧みず、道のために動く人がなければ、国は愛国者と称するデマゴーグの口に乗せられて、国運の傾くのを寧《むし》ろ助けるような始末になる虞《おそれ》がある。
 この種の人は必らずどの国にもあるものと思う。現に僕は伊国《いこく》に於ても仏国にでもかくの如き人あることを知っている。また独逸《ドイツ》にも同様の人が今は追放同様の身になっているのを知っている。露国の如きに至ってはこういう人が数多《あまた》あって、何《いず》れも外国に流浪し、寒天に着るものもなく窮居している。

[#5字下げ]真の愛国者の態度[#「真の愛国者の態度」は中見出し]

 せんだって某国人《ぼうこくじん》と談話を交えている間に、その人|曰《いわ》く、我国が貴国に言語道断の態度を執《と》ったのは、決し
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