、しかも外国人にあてて自国人の欠点を忌憚《きたん》なく述べた彼の勇気は実に敬服の至りである。またも一歩深く立ち入って彼の心情を窺えば、彼の真意はその同胞を警戒するにありとはいえ、言葉として外に現われたものは、殆《ほとん》ど同胞を侮辱《ぶじょく》するが如き烈《はげ》しい用語を以《もっ》てする必要を彼が感じた心持に強く同情せざるを得ない。同時にまたかくの如き言をなせる彼のこの詩を読む米人の心持にも感激せざるを得ないのである。もし地を替《か》えて、同じ詩を日本人が書き、これを日本の新聞か雑誌かに掲げたなら、如何《いか》なる非難を受けるかと思えば、僕はかえって隣邦米人の心持の広きを羨《うらやま》しく思うのである。
[#5字下げ]予言者あって国は偉大となる[#「予言者あって国は偉大となる」は中見出し]
僕はこの詩を読んで、その作者の奇抜にして国を愛するとともに人道を重んずるに感じ、同時にかくの如き人が何《いず》れの国を問わず国民の中《うち》にあったならば、それこそいわゆる国の師ともいうべきものであって、旧約全書に現われた猶太《ユダヤ》の予言者というものも即ちこういう人であったろうと推量する
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