も持つて來て、皆の人にも食はせるやうにしてくれなかつたか、又た蕨粉の製造場でも拵へて、世間の人と共に之を分ち食するやうにしなかつたかと云ふことだ。自分ばかり甘い/\と食つて居るのでは、本當の人間と云へない。故に我々は孤立的動物でない、人間をソシアスとして考へねばならぬ。即ち人間は社會に生存すべき者であつて、决して社會以外に棲息の出來ないものであることを自覺せねばならぬ。又た人間は只だの動物とは異つてゐる。又た單に道徳的萬物の靈長と云ふのみでも無い。人間は社會的の活物である、故に人間をソシアスとして教育することが、最も必要なりと確信するのである。
我日本に於いては、封建割據の制度からも、自然と地方々々の人の間に隔壁を生じ、互に妙な感情を持つに至つた。近頃は大分に矯正されたけれども、尚ほ大分殘つて居る。尚ほ又た人怖がらせをするやうな、妙に根性の惡いことがある。折々書生仲間の中には、頭髮を蓬々とし、肩を怒らし、短い衣服を着て、怖い顏付をし、四邊を睥睨しながら、『衣至[#二]于肝[#一]、袖至[#二]于腕[#一]』などと謳つて、太い棒を持つて歩いて居る。さうして成るたけ世間の人に不愉快な觀念
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