イボタの虫
中戸川吉二

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【テキスト中に現れる記号について】

《》:ルビ
(例)一寸《ちよつと》の

|:ルビの付いていない漢字とルビの付く漢字の境の記号
(例)長い間|手間《てま》どつた

[#]:入力者注 主に外字の説明や、傍点の位置の指定
   (数字は、JIS X 0213の面区点番号)
(例)顳※[#「需+頁」、第3水準1−94−6]《こめかみ》を
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 無理に呼び起された不快から、反抗的に、一寸《ちよつと》の間《ま》目を見開いて睨《にら》むやうに兄の顔を見あげたが、直《す》ぐ又ぐたりとして、ヅキンヅキンと痛む顳※[#「需+頁」、第3水準1−94−6]《こめかみ》を枕へあてた。私は、腹が立つてならなかつたのだ。目は閉ぢはしてゐても。枕許《まくらもと》に立つてゐて自分を監視してゐるであらう兄の口から、安逸を貪《むさぼ》ることを許さないと云ふ風な、烈《はげ》しい言葉が、今にも迸《ほとばし》りさうに思はれてゐたのだ。
 兄は併《しか》し、急《せ》き立てて私の名を呼びつづけようとはしなかつた。もう私が目を醒《さま》したのだと知ると、熟睡のあとの無感覚な頭の状態から、ハツキ
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