り囲まれて、眠るやうに死んだ。大正八年一月三十一日午前十一時である。イボタの虫は、木村の家や原町の家などで、お通夜《つや》や葬式などに風邪引きが沢山出来たので、母が飲ませようとしたけれども、誰もイヤがつて飲まなかつた。女中たちにさへ嫌はれてゐた。母がたつた一人、つい此頃まで、どうかすると思ひ出したやうに煎じて飲んでゐた。
[#地から2字上げ](大正八年五月)



底本:「現代日本文學大系 91 現代名作集(一)」筑摩書房
   1973(昭和48)年3月5日初版第1刷発行
   1985(昭和60)年11月10日初版第12刷発行
入力:林 幸雄
校正:小林繁雄
2002年12月3日作成
青空文庫作成ファイル:
このファイルは、インターネットの図書館、青空文庫(http://www.aozora.gr.jp/)で作られました。入力、校正、制作にあたったのは、ボランティアの皆さんです。
前へ 終わり
全26ページ中26ページ目


小説の先頭へ
文字数選び直し
中戸川 吉二 の一覧に戻る
作家の選択に戻る
◆作家・作品検索◆
トップページ 登録 ご利用方法 ログイン
携帯用掲示板レンタル
携帯キャッシング