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「キーウィット、キーウィット、何《なん》と、綺麗《きれい》な鳥《とり》でしょう!」
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と歌《うた》うと、その一人《ひとり》も、とうとう仕事《しごと》を止《や》めました。そしてこの男《おとこ》は、最後《おしまい》だけしか聞《き》かなかった。
「鳥《とり》や、」とその男《おとこ》が言《い》った。「何《なん》て好《い》い声《こえ》で歌《うた》うんだ! おれにも、初《はじめ》から聞《き》かしてくれ。もう一|遍《ぺん》、歌《うた》ってくれ。」
「いやいや、」と鳥《とり》が言《い》った。「ただじゃア、二|度《ど》は、歌《うた》いません。それとも、その石臼《いしうす》を下《くだ》さるなら、もう一|度《ど》、歌《うた》いましょう。」
「いかにも、」とその男《おとこ》が言《い》った。「これがおれ一人《ひとり》の物《もの》だったら、お前《まえ》にやるんだがなア。」
「いいとも、」と他《ほか》の者《もの》が言《い》った。「もう一|遍《ぺん》、歌《うた》うなら、やってもいいよ。」
 すると鳥《とり》は降《お》りて来《き》たので、二十|人《にん》の粉《こな》ひき男《おとこ》は、総《そう》ががかりで、「ヨイショ、ヨイショ!」と棒《ぼう》でもって石臼《いしうす》を高《たか》く挙《あ》げました。鳥《とり》は真中《まんなか》の孔《あな》へ頭《あたま》を突込《つきこ》んで、まるでカラーのように、石臼《いしうす》を頸《くび》へはめ、又《また》木《き》の上《うえ》へ飛上《とびあが》って、歌《うた》い出《だ》しました。
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「母《かあ》さんが、わたしを殺《ころ》した、
 父《とう》さんが、わたしを食《た》べた、
 妹《いもうと》のマリちゃんが、
 わたしの骨《ほね》をのこらず拾《ひろ》って、
 手巾《はんけち》に包《つつ》んで、
 杜松《ねず》の樹《き》の根元《ねもと》へ置《お》いた。
 キーウィット[#「キーウィット」は底本では「キイウィット」]、キーウィット、何《なん》と、綺麗《きれい》な鳥《とり》でしょう!」
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 歌《うた》ってしまうと、鳥《とり》は羽《はね》を拡《ひろ》げて、右《みぎ》の趾《あし》には、鎖《くさり》を持《も》ち、左《ひだり》の爪《つめ》には、靴《くつ》を持《も》ち、頸《くび》のまわりには、石臼《い
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