元《ねもと》へ置《お》いた。
キーウィット、キーウィット、何《なん》と、綺麗《きれい》な鳥《とり》でしょう!」
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歌《うた》ってしまうと、鳥《とり》はまた飛《と》んで行《ゆ》きました。右《みぎ》の趾《あし》には鎖《くさり》を持《も》ち、左《ひだり》の爪《つめ》に靴《くつ》を持《も》って、水車小舎《すいしゃごや》の方《ほう》へ飛《と》んで行《ゆ》きました。
水車《すいしゃ》は、「カタン―コトン、カタン―コトン、カタン―コトン。」と廻《まわ》っていました。小舎《こや》の中《なか》には、二十|人《にん》の粉《こな》ひき男《おとこ》が、臼《うす》の目《め》を刻《き》って居《い》ました。
「カタン―コトン、カタン―コトン、カタン―コトン」と水車《すいしゃ》の廻《まわ》る間《あいだ》に、粉《こな》ひき男《おとこ》は、「コツ、コツ、コツ、コツ、コツ、コツ」と臼《うす》の目《め》を刻《き》って居《い》た。
鳥《とり》は水車小舎《すいしゃごや》の前《まえ》にある菩提樹《ぼだいじゅ》の上《うえ》へ棲《とま》って、歌《うた》い出《だ》しました。
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「母《かあ》さんが、わたしを殺《ころ》した、」
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と歌《うた》うと、一人《ひとり》が耳《みみ》を立《た》てました。
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「父《とう》さんが、わたしを食《た》べた、」
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と言《い》うと、また二人《ふたり》が耳《みみ》を立《た》てて、聞《き》き入《い》りました。
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「妹《いもうと》のマリちゃんが、」
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と歌《うた》うと、また四|人《にん》が耳《みみ》を立《た》てました。
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「わたしの骨《ほね》をのこらず拾《ひろ》って、
手巾《はんけち》に包《つつ》んで、」
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と言《い》った時《とき》には、臼《うす》を刻《き》っている者《もの》は、八|人《にん》ぎりになりました。
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「杜松《ねず》の樹《き》の」
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と歌《うた》うと、もう五|人《にん》ぎりになりました。
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「根元《ねもと》へ置《お》いた。」
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と言《い》うと、もう一人《ひとり》ぎりになりました。
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