っても、切棒駕籠は一挺だけにし、あとは垂駕籠《たれかご》にした。
大名やその他身分の高い者の乗る駕籠は長棒駕籠《ながぼうかご》といって、棒が長く、八人で手代りに舁《か》くことになっている。それを切って四人で舁くようにしたのが即ち切棒駕籠である。切棒は実際においては三人で舁き、一人は手代りで休む。いずれも戸は引戸である。垂駕籠は上から畳表に窓があいてるような物を垂らしてあるので、これは二人で舁く。それで切棒は駕籠も高く、人足賃も高いのである。本来は切棒に父が乗るはずであるが、それに継母と弟の大之丞とを乗せ、私と曾祖母と祖母とを各垂駕籠に乗せ、父は別に駕籠を作らせず、歩きもし、馬にも乗り、また駅々の竹で編んだのに時には乗っても宜いといって、駕籠無しで出発した。家来は二人連れた。その一人は槍を持って行く。それから別に人足を雇って具足櫃《ぐそくびつ》を舁がせる。この槍と具足櫃とは侍たる者の片時も身を離してはならぬ物であった。荷物は江戸から藩地まで『大まわり』と称える藩の渡海を業としている者に藩から托してもらって送らせるので、手近い荷物は葛籠に入れ馬の脊で一行と共に行くことになっている。
荷
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