その頃の生《な》ま意気書生などにおだてられてどうかして他に学費を得てそのまま修行を続けるつもりだといっていた。藩地の父は頗るそれを心配して私の上京を幸に、大之丞は是非とも郷地へ帰すようにと命じたけれども彼は容易にそれを承諾せなかったが、終に叱り付けて帰してしまった。この際餞別として例の猿若の芝居を見せて遣った。この他にも由井氏と同行したりあるいは自分一人で芝居の見物は随分したのである。
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   十五

 今回の出京は、英学の修業が目的であるのだから、その手順を求めたのであるが、私といい由井氏といい、書生としては老書生であるので、まさか少年輩と同じ級で、ABCを習うのも間が悪い。といって自分の都合のよい学校もないから、或る日同郷の先輩藤野正啓氏に相談すると、それは私が、親しくしている岡鹿門の塾へ行くがよい、彼の塾頭には河野某というが、同じ仙台人で漢学の傍ら英学を修めていて、岡の塾は漢学と洋学とを二つながら教授しているからその洋学の方を学ぶといって入門するがよい、私が紹介しようと肯われた。そこで私は由井氏と共にその頃愛宕下町にあった岡塾へ行って、まず岡先生に面謁し、それから
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