った。この両郡を管轄している租税課出張所の権大属白井守人氏は殆ど身を挺して熱心な説諭をしたので纔《わずか》に防ぎ止めたのであった。しかのみならず、城下に居る士族や解放された卒なども、改革に遭って門閥家禄を失い、あるいは平民に落されたという怨恨もあるから、何か事あれがしと思う矢先にこの一揆が起ったのだから、いよいよそれが城下に繰り込む時は、共に力を協せて藩庁を攻めて、大少参事を殺戮してしまおうという考えの者も尠くなかった。そこで藩庁はかつてもいった如く、三の丸が焼けたので、二の丸に設けられていたが、一揆の起った頃から、大少参事その他属官等も藩庁に詰め切って頻りに鎮圧の評議を凝した。そうしてこの二の丸の高台から眺望すると、城下近くまで諸郡の一揆は押し寄せていて吶喊の声雷の如く起り、また租税課の出張所はその後久米郡も焼かれたので、それらの焔が天を焦がしている。夜に入ってはいよいよ物凄い光景で、藩庁は全く敵国の中に陥っている姿になった。そこで私もいよいよ死を決したが、百姓の竹槍に突かれて嬲り殺しにされるのもつらいから、どうかして敵前に進み出て彼の銃丸に中りたいと思った。勿論彼も猟銃位は沢山持っ
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