せられたいと迫った。けれども我藩の使者は幕府の指令もあるから、この盟約は断然謝絶した。そこで彼は不満足でなお種々問答もあったが、結局不得要領な談判で、我藩の使者は引取った。従てこれだけではまだ長州方面の警戒は解けないのであるが、前にもいう如く、彼には既に薩州と連合して大なる企ても進行していたのであるから、その後は何事もなく経過した。
しかるに我藩内では、この長州に対する事件からいわゆる正義派また過激派はいよいよ燃え立って、この際因循派の当局者を厳罰せねばならぬということになり、それに世子の側用達の戸塚助左衛門なども内より指嗾《しそう》したから、馬廻、大小姓の平士組の有志者も加って、大勢が藩主に謁見してこの厳罰の事を申立てた。また最も過激なる輩の如きは、当局者の居宅へ詰め掛けて、割腹を迫り、承知せねば切殺そうという申合までをした。そこで私の父は多少学問もしているから大義名分位も心得ているのであるが、藩主始め家老その他の重役が、藩の立場の危難を慮るがために長州へ内使を立てるということになったので、それにも反対をしかね、その方便も多少時勢の変化を待つためにもなろうと考えていた。しかるにこれ
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