ったので、後では笑いになった。
 既に休兵の命はあったけれど、長州の態度は少しも判らぬから、何時攻めて来るかも知れぬので、軍備は調べて置かねばならぬ。ある日世子は二の丸から本丸へかけての櫓々の武器の検査された。その際天守閣に登られて、私もお供して初めてこの天主閣の眺望をしたのである。最上層には遠祖の菅原道真即ち天満宮が祀ってある。その他にも武器などが置かれてあったが、この天主閣の下は石造の穴蔵のような物になっていた。外へ出るには鉄の閂《かんぬき》があって、外から鉄の閂に錠が下してある。ちょっと見れば外からでなければ入れぬようであるが、別に下層の間に或る押入の唐紙を明けると、そこの板敷は一つ一つ刎ね板になっていて、長い梯子があって右の穴蔵へ下れることになっていた。世子と共に私も下りて見たが、上下周囲凡て石造で暗黒な上に身も冷や冷やする。ここは終に落城という時に、君公や近習等の者が自殺するために設けられたもので、上の天主閣へ火を縦てば、それが焼け落ちて総ての死骸が灰となってしまう。それを敵から邪魔をしようと思っても、鉄の扉だからなかなか明かない。また外から閂があるから最初はまさかこの内に人
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