上は撰士隊と称して槍を持っていた。そうして身にはやはり甲冑を着け、それぞれに指物を背にした。で、私もやはり具足櫃に甲冑その他を入れ、槍も一本携えていた。かつていった如く下手ながら撃剣は少々稽古していたなれども、槍は少しも習っていない。その習わぬ槍を揮って世子の御馬前を警護して敵と戦わんとしたのは、今から思えば馬鹿々々しい次第である。されどその時は何とも思わず、敵に逢ったら力限り働くつもりで、まさか打ち勝つとも確信がなかったが、敵に討たれて死ぬという事も別段怖くもなかった。この時は十九歳であったが、今の兵隊が二十歳の丁年で従軍して敵に対って別に怖れもせず、勇往奮闘する心理状態の如きも、これから推すと不思議はないのだ。尤も私も少しは戦場の練習をして置きたいと思って、まだ出陣せないで宅にいた頃、座敷で甲冑を着て抜身の槍を手で扱いて見た事があった。持ち馴れぬ槍とて随分重かった。それでまさかの段には槍を捨てて抜刀して切り込もうという考えもしていた。何しろ戦場に向う覚悟といっても、経験のない者は、誰れも私位の考えでいたのが多かったろう。
しかるに出先の軍隊から急報があって、上下一同に色を変じたの
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