書院ではなくて、中書院という所へ出て、その仲間も皆歴々の嫡子のみである、藩主が江戸へ参勤したり、藩地へ帰任したりするのを送迎する際にも、歴々仲間の出る所へ出られる事になったので、何だか愉快ではあったが、私どもの家は士族としてはさほどよい家柄ではないのに、父のお庇《かげ》を以てかように私までが歴々の嫡子達と一緒になるのだから、仲間の人々からは何か違った奴が入って来たという風で余り言葉も交わしてくれず、多少そこに軽蔑の眼を以て見られるようなので、その点は不快に感ぜられた。
 この頃、国内は段々と騒がしくなって来て、朝廷からは将軍|家茂《いえもち》公に是非とも上洛せよとの勅命が下り、将軍においても遂に上洛せらるる事になったので、藩の世子もその警衛として江戸から京都へ上った。そこで私の父もその供をして、世子が公武の間に立ちいろいろな勤務をせらるるために、父も一層配慮した事であった。それで聊かの風邪等も押して奔走していた結果、遂に熱病に罹って段々と重態に陥った。この事が藩地の私ども家族の者へも伝わったので、一同大いに心配して私は既に十七歳に成っていたから、単身父の看病に京都へ赴くことになった。

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