くにつかれきつて
白砂の上にながながとあふむきに倒れてゐよう。
さうして色の黒い娘たちと
あてもない情熱の戀でもさがしに行かう。


 大砲を撃つ

わたしはびらびらした外套をきて
草むらの中から大砲を曳きだしてゐる。
なにを撃たうといふでもない
わたしのはらわた[#「はらわた」に傍点]のなかに火藥をつめ
ひきがへるのやうにむつくり[#「むつくり」に傍点]とふくれてゐよう。
さうしてほら貝みたいな瞳《め》だまをひらき
まつ青な顏をして
かうばうたる海や陸地をながめてゐるのさ。
この邊の奴らにつきあひもなく
どうせろくでもない 貝肉の化物ぐらゐに見えるだらうよ。
のらくら息子のわたしの部屋には
春さきののどかな光もささず
陰鬱な寢床のなかにごろごろ[#「ごろごろ」に傍点]とねころんでゐる。
わたしを罵りわらふ世間のこゑこゑ
だれひとりきて慰さめてくれるものもなく
やさしい婦人《をんな》のうたごゑもきこえはしない。
それゆゑわたしの瞳《め》玉はますますひらいて
へんにとうめい[#「とうめい」に傍点]なる硝子玉になつてしまつた。
なにを喰べようといふでもない
妄想のはらわたに火藥をつめこみ

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