再會

皿にはをどる肉さかな
春夏すぎて
きみが手に銀のふほをく[#「ふほをく」に傍線]はおもからむ。
ああ秋ふかみ
なめいしにこほろぎ鳴き
ええてるは玻璃をやぶれど
再會のくちづけかたく凍りて
ふんすゐはみ空のすみにかすかなり。
みよあめつちにみづがねながれ
しめやかに皿はすべりて
み手にやさしく腕輪はづされしが
眞珠ちりこぼれ
ともしび風にぬれて
このにほふ鋪石《しきいし》はしろがねのうれひにめざめむ。


 地上

地上にありて
愛するものの伸長する日なり。
かの深空にあるも
しづかに解けてなごみ
燐光は樹上にかすかなり。
いま遙かなる傾斜にもたれ
愛物どもの上にしも
わが輝やく手を伸べなんとす
うち見れば低き地上につらなり
はてしなく耕地ぞひるがへる。
そこはかと愛するものは伸長し
ばんぶつは一所《いつしよ》にあつまりて
わが指さすところを凝視せり。
あはれかかる日のありさまをも
太陽は高き眞空にありておだやかに觀望す。


 花鳥

花鳥《はなとり》の日はきたり
日はめぐりゆき
都に木の芽ついばめり。
わが心のみ光りいで
しづかに水脈《みを》をかきわけて
いまぞ岸邊に魚を
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