示せ!」※[#濁点付き片仮名ヰ、1−7−83]クトル・ユウゴウの言葉そのものが、その中にひそんでゐる。
氏が、郷土に於ける生活は、さなきだに因習的な莫迦らしい制度や、臆面もない抑壓的なものが、自然と外から内へまで、のさばり込んだらしい。それへの怒り! 即ち生活的の苦[#「苦」に丸傍点]は、藝術的の怒り[#「藝術的の怒り」に丸傍点]となつて現はれたのだ。自分はこの堪へ難いやうな作品を見た時に、藝術的であると云ふ言葉をもつて、之等の詩に對する事を排けなくてはならぬと思つた。何故なれば、餘りにも、藝術のもつムード以外の生活的悲鳴が、之等を領してゐたからである。
「月に吠える」や「青猫」によつて氏を洞見してゐた讀者は、如何にこの詩集によつて驚異するであらう。以上の詩集によつて知らるる氏は、強い厭生思想者であり、神祕的な詩人である。この眼をつぶつた、齒を食ひしばつた怒りを知らない。この現實的な苦悶を知らない。
最近の氏には、今までにない内攻する苦悶が見える。田舍に住む事以外に、多樣の堪へ難い行き詰りがあるらしい。殊に何物かの甚だしい行き詰りがあるらしい。この詩集はそれへの一つの暗示であるやう
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