に素足にて徒歩《かち》まうでかし。なんぢの白いあなうらもつめたい土壤と接觸するときに、兄の戀魚はまあたらしい墓石の下によろこびの目をさます。その兄のめざめを感じ、おまへの素足に痙攣する地下電流の銅線をふんでわたれ。きけ、遠い遠い靈感の墓場で兄の精靈がおまへを呼んで居る。
妹よ、
み寺に行く途は遠くとも朝のちよこれいと[#「ちよこれいと」に傍点]の興奮を忘れるな。
妹よ、
凝念敬具。
おんみが菊をさげて歩むの路を清淨にせよ。
ああ、秋だ、
秋だ、
兄の手をして血縁《けちえん》の墓石にかがやかしむるの秋だ。
妹よ、
兄が純金の墓石の前に、菊を捧げて爾が立つたとき、兄はほんたう[#「ほんたう」に傍点]におん身に接吻する。おん身のにくしんに、額に、脣に、乳房に、接吻する。
妹よ、
いまこそなんぢに告ぐ、
われらいかに相愛してさへあるに、兄の手は、足は、くちびるは、かつて一度もなんぢの肉身に觸れたことさへないのである。
とき子よ、
兄は哀しくなる、しんに兄は哀しくなる。
めいりいごうらうんど、靈性木馬のうへのさんちまんたりずむ[#「さんちまんたりずむ」に傍点]をきみは知るか。
木馬はまはる、
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