詩の翻訳について
萩原朔太郎

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【テキスト中に現れる記号について】

《》:ルビ
(例)庵《いほり》

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 宮森麻太郎氏の英訳した俳句は、外国で非常に好評ださうであるが、その訳詩を通じて、外国人が果して何を感銘したものか疑問である。おそらくは歌劇ミカドを見物して、日本人を理解したといふ程度であり、俳句を HAIKAI として解釈した程度であらう。多くの場合に、外国人に好評される日本の者は、真の純粋の日本ではなく、彼等のフジヤマやゲイシヤガールの概念性に、矛盾なく調和して入り得る程度の、テンプラフライ式の似而非日本である。真の本当の日本のものは、彼等に理解されないことから、却つて退屈されるばかりである。宮森氏の翻訳が西洋で受けてる理由も、おそらくそれがハイカイ的俳句である為かも知れないのである。
 小宮豊隆氏は、翻訳の不可能を例証する為、次の宮森氏の訳句を引例してゐる。

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The ancient pond!
A frog plunged splash!
(古池や蛙とび込
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