ある。他はすべて詩 Poem にすぎない。即ち表現には二種あるのみ。曰《いわ》く、「詩」とそして「美術」である。一切の表現はこの二つの中の何れかに属している。詩でなければ美術、美術でなければ詩である。そして前者ならば芸術生活主義(生活のための芸術)だし、後者ならば芸術至上主義(芸術のための芸術)である。故に芸術の記号たる「美」という言語は、音楽にも詩にもあたえられず、独《ひと》りただ美術にのみ冠されている。美術こそは美の中の美、芸術中の芸術である。


     第十二章 特殊なる日本の文学


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 前章に於て、吾人《ごじん》は芸術に於ける詩的精神の所在を概観した。そして文学の本質が、概して皆「詩的のもの」であることを認識した。けれどもその場合、吾人は特に「西洋の」と断っておいた。なぜなら日本の文学は特殊であり、性質が全く異っているからだ。日本に於ては、昔から現代に至るまで、欧洲に於けるような文学は、殆《ほとん》ど全く発育してない。第一既に、文学の起原に於ける歴史からちがっているのだ。西洋の文学史は、前言う通り希臘《ギリシャ》の叙事詩等から起原して来た。然るに日本に
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