始め八百枚ほどに書いた稿を、三度書き換えて後に五百枚に縮小した。なるべく論理を簡潔にし、蛇足《だそく》の説明を除こうとしたからである。特に自由詩に関する議論は、それだけで既に三百枚の原稿紙になってる稿本『自由詩の原理』を、僅《わず》かこの書の一二章に縮小し、大略の要旨だけを概説した。したがって或る種の読者には、多少難解と思われる懸念もあるが、十分注意して精読すれば、決して解からないと言うところはないと思う。
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目次
序
新版の序
読者のために
概論
詩とは何ぞや
内容論
第一章 主観と客観
第二章 音楽と美術
第三章 浪漫主義と現実主義
第四章 抽象観念と具象観念
第五章 生活のための芸術・芸術のための芸術
第六章 表現と観照
第七章 観照に於ける主観と客観
第八章 感情の意味と知性の意味
第九章 詩の本質
第十章 人生に於ける詩の概観
第十一章 芸術に於ける詩の概観
第十二章 特殊なる日本の文学
第十三章 詩人と芸術家
第十四章 詩と小説
第十五章 詩と民衆
形式論
第一章 韻文と散文
第二章 詩と非詩との識域
第三章 描写と情象
第四章 叙事詩と抒情詩
第五章 象徴
第六章 形式主義と自由主義
第七章 情緒と権力感情
第八章 浪漫派から高蹈派へ
第九章 象徴派から最近詩派へ
第十章 詩に於ける主観派と客観派
第十一章 詩に於ける逆説精神
第十二章 日本詩歌の特色
第十三章 日本詩壇の現状
結論
島国日本か? 世界日本か?
『詩の原理』の出版に際して
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概論
詩とは何ぞや
詩とは何だろうか? これに対する答解は、形式からと内容からとの、両方面から提出され得る。そして実に多くの詩人が、古来この両方面から答解している。もしこれ等の答解にして完全だったら、吾人《ごじん》はそのどっちを聞いても好いのである。なぜなら芸術に於《お》ける形式と内容の関係は、鏡に於ける映像と実体の関係だから。
しかしながら吾人は、そのどっちの側からの答解からも、かつて一つの満足のものを聞いていない。特に内容からされたものは、一般に甚《はなは》だしく独断的で、単に個人的な立場に於ける、個人的な詩を主張してい
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