り、
ひとの手にはおもみを感じ
しづかに純金の亀ねむる、
この光る、
寂しき自然のいたみにたへ、
ひとの心霊《こころ》にまさぐりしづむ、
亀は蒼天のふかみにしづむ。




あふげば高き松が枝に琴かけ鳴らす、
をゆびに紅をさしぐみて、
ふくめる琴をかきならす、
ああ かき鳴らすひとづま琴の音にもつれぶき、
いみじき笛は天にあり。
けふの霜夜の空に冴え冴え、
松の梢を光らして、
かなしむものの一念に、
懺悔の姿をあらはしぬ。

いみじき笛は天にあり。




つみとがのしるし天にあらはれ、
ふりつむ雪のうへにあらはれ、
木木の梢にかがやきいで、
ま冬をこえて光るがに、
おかせる罪のしるしよもに現はれぬ。
みよや眠れる、
くらき土壌にいきものは、
懺悔の家をぞ建てそめし。


天上縊死

遠夜に光る松の葉に、
懺悔の涙したたりて、
遠夜の空にしも白ろき、
天上の松に首をかけ。
天上の松を恋ふるより、
祈れるさまに吊されぬ。




いと高き梢にありて、
ちいさなる卵ら光り、
あふげば小鳥の巣は光り、
いまはや罪びとの祈るときなる。


雲雀料理[#「雲雀料理」は太字]
五月の朝の新緑
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