たれ、
なみだをたれ、
いまはや懺悔をはれる肩の上より、
けぶれる竹の根はひろごり、
するどき青きもの地面に生え。




光る地面に竹が生え、
青竹が生え、
地下には竹の根が生え、
根がしだいにほそらみ、
根の先より繊毛が生え、
かすかにけぶる繊毛が生え、
かすかにふるえ。

かたき地面に竹が生え、
地上にするどく竹が生え、
まつしぐらに竹が生え、
凍れる節節りんりんと、
青空のもとに竹が生え、
竹、竹、竹が生え。

      ○

  みよすべての罪はしるされたり、
  されどすべては我にあらざりき、
  まことにわれに現はれしは、
  かげなき青き炎の幻影のみ、
  雪の上に消えさる哀傷の幽霊のみ、
  ああかかる日のせつなる懺悔をも何かせむ、
  すべては青きほのほの幻影のみ。


すえたる菊

その菊は醋え、
その菊はいたみしたたる、
あはれあれ霜つきはじめ、
わがぷらちなの手はしなへ、
するどく指をとがらして、
菊をつまむとねがふより、
その菊をばつむことなかれとて、
かがやく天の一方に、
菊は病み、
饐《す》えたる菊はいたみたる。




林あり、
沼あり、
蒼天あ
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