に成長《ひとゝな》つた方のだから自分でも文士などゝ任じては居らぬし、世間も大かた然《さ》うだらう。それだから今日《こんにち》書く小説もやはり其通り、迚《とて》も戀愛や煩悶の青年諸氏に歡《よろこ》ばれるやうな品物を、書けもしなければ、又た書かうといふ野心も起らない。僕はやはり僕だけの僕で居る。
[#下げて、地より1字あきで](明治四十二年八月「文章世界」第四卷第十一號)



底本:「明治文學全集89巻 明治歴史文學集」筑摩書房
   1976(昭和51)年1月30日初版発行
初出:「文章世界」博文館
   1909(明治42)年8月第4巻第11号
入力:和井府清十郎
校正:松永正敏
2002年3月11日公開
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