コ全体の畳敷に対して床の間の二元性が対立の力を減ずるからである。床の間は床板を張って室内の他部と判明に対立することを要する、すなわち床の間が「いき」の条件を充《みた》すためには本床であってはならない。蹴込床《けこみどこ》または敷込床を択ぶべきである。また、「いき」な部屋では、床の間と床脇の違棚《ちがいだな》とにも二元的対立を見せる必要がある。例えば床板には黒褐色のものを用い、違棚の下前《したまえ》にはひしぎ竹の白黄色のものを敷く。それと同時に、床天井と棚天井とに竹籠編《たけかごあみ》と鏡天井とのごとき対立を見せる。そうして、この床脇の有無がしばしば、茶屋建築の「いき」と茶室建築の「渋味」との相違を表わしている。また床柱《とこばしら》と落掛《おとしがけ》との二元的対立の程度の相違にも、茶屋と茶室の構造上の差別が表われているのが普通である。
しかしながら、「いき」な建築にあってはこれら二元性の主張はもとより煩雑《はんざつ》に陥ってはならない。なお一般に瀟洒《しょうしゃ》を要求する点において、しばしば「いき」な模様と同様の性質を示している。例えばなるべく曲線を避けようとする傾向がある。「い
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