う。
 「きざ」は、派手と下品とを結び付ける直線上に位している。
 「いろっぽさ」すなわち coquet は、上面の正方形内に成立するものであるが、底面上に射影を投ずることがある。上面の正方形においては、甘味と意気とを結び付けている直線に平行してPを通る直線が正方形の二辺と交わる二点がある。この二つの交点と甘味と意気とのつくる矩形全体がいろっぽさである。底面上に射影を投ずる場合には、派手と下品とを結び付ける直線に平行してOを通る直線が正方形の二辺と交わる二つの交点と、派手と、下品とがつくる矩形がいろっぽさを表わしている。上品と意気と下品とを直線的に考えるのは、いろっぽさの射影を底面上に仮定した後、上品と意気と下品の三点を結んで一の三角形を作り、上品から出発して意気を経て下品へ行く運動を考えることを意味しているはずである。影は往々実物よりも暗いものである。
 chic とは、上品と意気との二頂点を結び付ける直線全体を漠然《ばくぜん》と指している。
 〔raffine'〕とは、意気と渋味とを結び付ける直線が六面体の底面に向って垂直に運動し、間もなく静止した時に、その運動が描いた矩形の名称で
前へ 次へ
全114ページ中47ページ目


小説の先頭へ
文字数選び直し
九鬼 周造 の一覧に戻る
作家の選択に戻る
◆作家・作品検索◆
トップページ 登録 ご利用方法 ログイン
携帯用掲示板レンタル
携帯キャッシング