athematische Existenz, 1927, S. 1.
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     二「いき」の内包的構造

 意識現象の形において意味として開示される「いき」の会得《えとく》の第一の課題として、我々はまず「いき」の意味内容を形成する徴表を内包的[#「内包的」に傍点]に識別してこの意味を判明[#「判明」に傍点]ならしめねばならない。ついで第二の課題として、類似の諸意味とこの意味との区別を外延的[#「外延的」に傍点]に明らかにしてこの意味に明晰[#「明晰」に傍点]を与えることを計らねばならない。かように「いき」の内包的構造と外延的構造とを均《ひと》しく闡明《せんめい》することによって、我々は意識現象としての「いき」の存在を完全に会得することができるのである。
 まず内包的見地にあって、「いき」の第一の徴表は異性に対する「媚態[#「媚態」に傍点]」である。異性との関係が「いき」の原本的存在を形成していることは、「いきごと」が「いろごと」を意味するのでもわかる。「いきな話」といえば、異性との交渉に関する話を意味している。なお「いきな話」とか「いきな事」とかいううちには、その異
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