此の議會の速記録と云ふものが皇帝陛下の御覽にならないものならば、思ふさまきたない言葉を以て罵倒し、存分ひどい罵りやうもあるのであるが、勘辨に勘辨を加へて置くのである。苟も立憲政體の大臣たるものが、卑劣と云ふ方から見やうが、慾張と云ふ方から見やうが、腰拔と云ふ方から見やうが、何を以て此國を背負つて立てるか。今日國家の運命は、そんな樂々とした氣樂な次第ではございませぬぞ。
 今日の政府――伊藤さんが出ても、大隈さんが出ても、山縣さんが出ても、まア似たり格恰の者と私は思ふ、何となれば、此人々を助ける所の人が、皆な創業の人に非ずして皆な守成の人になつてしまひ、己の財産を拵へやうと云ふ時代になつて來て居りますから、親分の技倆を伸ばすよりは己の財産を伸べやうと云ふ考になつて、親分が年を取れば子分も年を取る、どなたが出てもいかない。此先きどうするかと云へば、私にも分らない。只だ馬鹿でもいゝから眞面目になつてやつたら、此國を保つことが出來るか知らぬが、馬鹿のくせに生意氣をこいて、此國を如何するか。私の質問はこれに止まるのでございます。
 誰の國でもない、兎に角今日の役人となり、今日の國會議員となつた者
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