――人民を殺すは己の身體に刄を當てると同じであると云ふことを知らない。自分の大切なる處の人民を、自分の手に掛けて殺すと云ふに至ては最早極度で、是で國が亡びたと言はないで如何するものでございます。陛下の臣民を警察官が殺すと云ふことは、陛下の御身に傷つけ奉る事、且又た己の身體に傷つけるのであると云ふ此道理が、此の大なる天則が分からなくなつて、尚ほ且つ之を蔽ふ爲めに、兇徒嘯集と云ふ名で召捕つて裁判所へ送る。可し。兇徒嘯集と云ふやうなものであれば、私も其中の一人でありますから、此の議場の開會と閉會とに拘らず、何故先きに私を捕まへて行かないのであるか。普通の事件なら別の話、兇徒嘯集と云ふやうな大きな事なれば、議員でも何でも容赦は無い筈だ。私は是まで隨分人民の權利を主張すること衞生に關する事など演説して歩るいた。世の中の馬鹿には教唆のやうに見えるであろうから、引つ張つて行くことがあるなら、此の私を一番に引つ張つて行くが宜い。兇徒嘯集などゝ大層な事を言ふなら、何故田中正造に沙汰をしなかつた。人民を撲ち殺す程の事をするならば、何故田中正造を拘引して調べないか。大ベラ棒と言はうか、大間拔と言はうか、若し
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